第8回 2004/10/12
のんで秋淋しがる一人哉  子規

 めっきりお寒くなりました。スマイリー井原でございます。

 今、これを書きながら、グループサウンズ「ザ・リンド&リンダース」のアルバムを聞いています。1960年代後半に活躍したバンドで、地元関西ではザ・タイガースよりも人気があったらしいのですが、皆様はご存じでしょうか? 私は、つい最近まで全く知らなかったのですが、ひょんなことから興味を持ち、CDを買ったのです。

 先月の大阪ライブツアーの一夜、心斎橋アメリカ村にあるバー「JET」へ行ったときのこと。「JET」を営んでいらっしゃるジミーさんは、春一番コンサートで「大西ユカリと新世界」のギタリスト三好さんが紹介してくださった「ナニワのミュージックシーンのドン」という方で、お店でよくペーソスのCDをかけてくださっているとのことなので、ごあいさつに伺ったのです。

 店のドアを開けると、先客が3名様ほどいらっしゃって、席を詰めて頂いたのですが、その内のお一人に岩田さんがいきなり話しかけました。
「もしかして、加賀テツヤさんですか?」
「ああ、そうやけどぉ」
 岩田さんが声をかけた方は、ピーナッツを摘みながら、にこやかに答えました。岩田さんは、ちょっと興奮気味に、隣の私へ「リンド&リンダースの加賀さんだよ、知らない?」と聞くので、「えー、あー、あのー、存じ上げません」と尻すぼみに小声で答えました。が、その加賀テツヤさんは、私が知らなかったことなど気にせず、ニコニコしています。岩田さんは、加賀さんにお会いできたことが嬉しいらしく、私の返事を拾うこともなく自己紹介して名刺を渡しています。
「ワシ、大阪湾に船浮かべて、それをライブハウスにしとるんですわ。よかったら、そこで一緒にやりましょ」
 そう誘われて、岩田さんはすっかりその気になり、「今度、また大阪に来ますので、そのときは是非!」と椅子から腰を浮かしています。加賀さんは、細身の素肌にアロハを着て、長い髪をブロンドに染めた、目元涼しげな方です。
「もう、58ですわ」
 お年を聞いて、びっくり。なんてカッコイイ58歳だろう! 美少年の面影たっぷりに、不良がそのまま大人になったカンジ。同年代のご友人と、お若い美人に挟まれて、楽しそうに呑んでいらっしゃいました。岩田さんは、「加賀さんに会えるなんて、やっぱりここへ来てよかったなぁ」と満足げ。振り向くと、島本さんは、なんだか難しい顔をして、バーボン&ソーダを舐めています。

 その後、「ほな、お先ぃ」と言って、加賀さん御一行は帰られました。案の定、島本さんが、「あの人、有名なの?」と聞いたので、岩田さんが説明していました。島本さんって、日本の歌手とか、あまり知らないらしいです。なにしろ好きな歌手がソ連の国民歌手ウラジミール・ヴィソツキィーですから。世間の人は、そっちを知らないっつうの。

 東京へ帰ってから、早速CDショップを探して、テイチクから出ているベストアルバムを入手しました。最大のヒットは、『ギター子守歌』という曲のようです。童歌のような素朴なメロディーで、作詞は寺山修司さん(グループのリーダー加藤ヒロシさん作曲、寺山さん作詞のコンビは、フォーク・クルセイダーズの名曲『戦争は知らない』を生んでいたということも発見しました)。このCDをカセットテープに録音して岩田さんにあげたところ、岩田さんは、「『ギター子守歌』なんて曲、あったかなぁ」という返事。加賀さんのことは知っていても、曲はよく覚えていなかったんです。なんという中途ハンパな知識!

 といったワケで、今、私の中ではザ・リンド&リンダースが大ヒット中です。『燃えろサーキット』という曲がカッコイイんですよ。こういうの、ペーソスもやったらどうですかね?

 最後になりましたが、今週末は、下北沢KOMPALでの定期ライブです。よかったら、覗いてみてください。

 じゃ、股……じゃなくて、又!
ギタ|子守歌