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第585回「なぜか埼玉と演劇」2016 04.11発行


 私スマイリー井原は、埼玉県浦和市の生まれ育ちです。父方は祖父母共に先祖代々、武蔵国は北足立郡、紀州公御鷹場の在でござんす。私の実家があったあたりは、江戸時代は中山道浦和宿でしたが、行程上、大抵の旅人は素通りしてしまうという悲しい宿場町だったようです。私が子供のころは、県庁所在地なのに特急が止まらない全国唯一の市でした。名物は、至極ローカルなもの以外、ありません。観光地も、これといってありません。山もないし、海もない。電車に乗ると20分くらいで東京のど真ん中に着きます。多摩より近いくらいなのに、なぜか「ダ埼玉」と言われておりました。
 そんな悲しい埼玉っ子に、1981年4月5日、希望の光が見出されたのです。ご当地ソング『なぜか埼玉』が発売されたのでした。私の周りでは、大変な喜びを持って迎えられたのです。「ついに俺たちの歌が出た!」と。

 4/5(火)は、新宿一丁目のライブが出来るインド料理店「パペラ」で、「さいたまんぞう知り合いライブ」でした。さいたまんぞうさんこそ、私ども埼玉っ子の希望の光『なぜか埼玉』をもたらして下さった偉人です。あれから35年、まさかその偉人と「知り合い」となってステージをご一緒させて頂くことになろうとは! その「知り合い」は、もちろん私一人ではございません。聖なる回文ブルースさん、雨本ふみさん、ペーソスです。合間に、さいたんぞうさんの司会とネタをはさんで、たっぷり2時間半ほどのイベントとなりました。感慨深し。さいたまんぞうさん、プロデュースして下さった水内トオルさん、ありがとうございました!

 私が何度も「私の周りでは、『なぜか埼玉』は大変な喜びを持って迎えられた」と申し上げても、さいたまんぞうさんは怪訝な顔をなさるばかり。「嫌がられてるんだろうな、と思ってましたよ」と仰います。そんなこと、ないんだってば! カラオケに、埼玉のご当地ソングは『なぜか埼玉』と、秋葉豊とアローナイツ『大宮駅から乗る女』の2曲しか入っていないんだってば! 本当にホントなんだってば!

 という余韻に浸りつつ、私には先々の懸念が蟠っていたことを告白せねばなりますまい。さいたまんぞうさんのことでは、ありません。鈴木一功さんという俳優さんの件です。島本慶と同い年。劇団「レクラム舎」の看板俳優。「ペーソスと一緒にやりたいのよ。島本さんが歌って、オレが独り芝居で、さ」というプランが持ち上がったのは、昨日今日のことではありません。何年前のことだったか、最早、覚えておりません。それが、今年の1月、急に「もうすぐ出来るんだ。4月にやろう」という話になり、なったはいいが「たたき台」と称する台本が2月末に届いたきり。窓口が島本慶ってのが、クセモノです。「オレがわからなんだから、説明のしようがないよ」と開き直るのでござる。我々も、もとより出たとこ勝負ですから、何をどうするのかも分からないまま、当日を迎えたのでした。

 4/10(日)、松陰神社前「スタジオAR」で、鈴木一功主
演、ペーソス助演による恐ろしい試み、「鈴ヶ森義彦の手紙
」が上演されました。我々、米内山以外は演劇素人なのに、
ドーなるのか?
 ともかく、午前中に集合して、一功さんから説明を受けま
した。セリフがあるの?聞いてないよ〜!という状況でした
が、なぜか、誰も緊張感ナシ。末井昭のセリフ「キミ、会社
に居られなくなるよ?」こんな感じで良いんでしょ? あれ
、違うの? ボクには出来ませんよ。良いんですか、まぁ、
何とかなるでしょ。
 普通、芝居は、徹底的に稽古して、稽古して、稽古し倒し
てダメ出し、ドライ、ランスルー、ゲネプロ、と段階を踏む
ことは、演劇一家育ちの米内山尚人はわかりすぎていて、
「こんなんで良いのか?」とボソっと言っておりましたが、
良いわけない、と素人の私も思うワケです。でも、主演にし
て演出家の鈴木一功さんが良いって言うんだからさぁ。ドー
とでもなれ、ドーせドーにもこうにも、今更、ならんし。
 通し稽古、なのかゲネプロなのか、初顔合わせでとりあえ
ず読み合わせなのか、1回やっただけで、鈴木一功さん曰く
「イイじゃない! じゃ、本番宜しく」イイんかい!
なぜか、緊張感がないんですよねぇ、我々。無責任なのかなぁ。空き時間2時間、松陰神社をお参りして、商店街をブラブラしていたら、これまたなぜか、ボーイズバラエティ協会「くれない組」さん「菊仙」さんと遭遇。同じ時間帯に、松陰神社前商店街で興行とのこと。御縁がありますなぁ。
※image via @iharatc50

 ボーっとしていたら、あっという間に本番です。一功さんは「客、来るのかね?」なんて言っていましたが、二階まで満席でした。だからといって緊張しない我々。ホント、無責任。
 ま、全体は一功さんの独り芝居ですから、我々は切っ掛けを受けてちょっとのセリフと歌。上手く行かなかったら、そんときゃそんとき、恥かくのは鈴木一功でしょ?ってな具合で、やっつけてしまいました。共演したレクラム舎の看板女優、松坂わかこさんが、「リハで、こりゃダメだと思ってたけど、上手く行きましたね」と終演後に仰っていました。奇跡的に上手く行った、もしくは、「こう見えても、我々、浅草芸人ですから」ということ、か? 舞台度胸だけは、一人前なのでした。ヒヤヒヤさせてしまって、申し訳ございません。

 ということで、この実験的ステージをご覧になったお客様は、幸か不幸か? めったにない見世物であったと思いますが、やっておった我々は、とても面白かったです。また、やりたい。芝居心が沸々とわいてきました。演劇、楽しい! でも、稽古はキライ。

 ということで、今週も出番たくさんあります。
本稿アップ日の4/11(月)は、銀座七丁目「まじかな」単独ライブです。
今週末、4/16(土)は、上野広小路亭「ダーリン寄席」です。
4/17(日)は、下北沢「ラ・カーニャ」単独ライブです。
次号アップ日の4/18(月)は、西荻窪「小料理HANA」単独ライブです。
宜しくお運びください!
 演劇、楽しい。プロに褒められて、自信を付けてしまいました。増長する私たち。「芝居? 簡単だよ。、まかしといて!」ってなもんです。お任せください、この恐れを知らぬ素人に!

スマイリー井原 @iharatc50  Facebook   
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